COLUMN弁護士コラム
2019.10.29
交通事故における損保会社の役割について
今日、モータリゼーションがかくも発達した事から、当然の事ながら交通事故が頻発する。自動車を運転する者が自賠責保険のみならず任意賠償損害保険に加入するのは、自動車を運転している限り交通事故が避けられないからである。
ところで法律事務を担っている弁護士を規律する弁護士法の第72条は、法律事務は弁護士だけができると規定している。
ところで損保会社は、交通事故の加害者、被害者に代わって示談を行なっている。
しかしながら示談行為が、法律事務である事に争いがない。
そうだとすると損保会社が示談行為を行うことは、弁護士法第72条違反ではないかという疑問が残る。
この点については紆余曲折があったものの、損保会社の示談交渉権は、交通事故による被害者を迅速かつ簡便に救済するために認められたとされている。
そうだとすれば、損保会社が被害者の迅速かつ簡便に救済するために示談交渉権が認められたのだから、損保会社は、被害者の迅速な救済を図るための善良な管理者の注意義務を負っている。この義務は、法律事務を行う場合の注意義務であるから、弁護士が法律事務を行う場合の注意義務ところで同等の注意義務であると考えられる。
ところがほとんどの損保会社は、この善良な管理者の注意義務を負っている事を自覚していないと思われる。
その事から、損保会社の中には被害者の治療費を支払うのは、単なるサービスであるとの主張をする損保会社まである。
最近当事務所で扱っている事件であるが、A損害保険会社がある追突事故の加害者側の任意保険会社であったが、その被害者にかつて頚椎捻挫による後遺障害第14級があった事から、その被害者がその事故による椎間板ヘルニアの除去手術を受ける直前に治療費の支払いを打ち切ったというケースである。
もっとも、A損害保険会社は、その被害者への治療費の支払いを打ち切った時点においても、被害者への治療費を打ち切る理由とその根拠を把握していなかった。
何故なら、その後当事務所は、その被害者の救済の為に裁判所に金員仮払仮処分を申立たが、A損害保険会社は、その時になって初めて後付けの証拠と思われる資料を提出してきたからである。
このような損害保険会社の違法とも考えられる対応は、A損害保険会社に限られる事ではない。
このような損害保険会社に課せられた注意義務に反すると思われる対応を受けられたと思われる方がおられましたら、情報の提供を求めます。