COLUMN弁護士コラム
2012.05.31
建築と弁護士
弁護士になりたてのころから建築には興味を持ってきた。
その理由は、弁護士の仕事が多くの場合、すでに生じている問題を解決するのが中心で、
法律を作ろうと思うのであれば生々しい政治家になるしかないのに、
建築はそれ自体が建物などを作り出すことでその仕事が現実に目に見えるからです。
今、弁護士が建築問題に関与する場合は、
その仕事の性質の違いを認識した上で対応することが必要である。
例えば、弁護士は追加変更工事をなす場合施主の同意を書面に残して工事をするように求める。
しかし、建築の現場では、現場で話し合いにより追加変更を決めそれに基づいて工事を行う。
いちいちその合意を書面にすることはまずない。
私もかつて追加変更の際の同意をとる書面を作成して建築業者に手渡して、
追加変更工事の場合は施主の同意をとるようにとアドバイスしたが、
その建築業者の行なっていた工事が相当大掛かりなもので、
かつ、追加変更工事も多数あったが、その同意の書面はたった一枚だけであった。
今、建築士の中に建築の性質を考えずに追加変更工事に必ず同意書面をとるように求める建築士がいるが、
その建築士は、真に建築というものを理解しているのだろうか。
また、建築問題にかかわる弁護士も建築の仕事の性質を理解しているのだろうか。
建築においては施主と業者の信頼関係が前提になっており、
施主と建築業者の信頼がまったくない場合はともかく、
いかなる場合にも追加変更工事についての施主の同意を要求することはいかがなものであろうか。
ちなみに、通常建築業者は、お金がかさむ追加変更工事を施主の同意を得ないで行うことはない。
また、弁護士は、建築確認の図面通りに工事がなされていないことをもって欠陥というが、
建築確認の図面通りに工事したからと言って欠陥のない建物ができる訳ではないことを看過している。
すなわち、建築の現場における現場処理は不可欠なのである。
建築問題にかかわる裁判官、弁護士、及び建築士に耳を傾けていただきたい。